入通院治療継続中のあなたにとって一番大事なことは、「ケガを治すこと」です。
もっとも、交通事故によるケガの治療については、「治す」以外にも考えておくべきことがあります。
それは、「症状の証拠を残す」ということです。
例えば、あなたが事故による捻挫や打撲等のケガをして相当の痛みがあったけれども、大変忙しいため通院はできず、痛みに堪えて仕事をしていたとしましょう。
このような場合、後になって加害者側に対し、打撲の痛みに対する慰謝料を請求したとしても、「通院をした診断書等が無いので打撲の証拠がない」と支払いを拒絶されてしまう可能性が高いでしょう。
実際にケガをして症状があったとしても、病院に行ってそれを診断書やカルテ等に記載して貰わなければ、それらの症状は「なかったこと」にされてしまうのです。
また、1日だけ病院に行って「打撲の痛みがあった」という記録を残してもらっても、翌日以降病院に行くのをやめてしまえば、結局、「翌日以降は症状がなくなったのだろう」と扱われてしまいます。
そのような状況で、弁護士に「だって私には症状があったんですよ!通院したくでもできなかったんですよ!」と言われても困ります。
弁護士には、貴方の言っていることが本当かどうか確認する術はありませんし、証拠の無い症状を裁判所で証明することもできないからです。
医療機関の記録に残らない症状は、存在しないものとして扱われる、という事実を、肝に銘じていただきたいと思います。
仮に病院等に入通院をして、診断書等を残してもらっているとしても、その診断書等に「漏れ」があり、書かれるべき症状が書かれていないとすれば、後々問題になる可能性があります。
例えば、被害者が事故に遭って「脳出血」、と「右舟状骨骨折(親指の付け根辺りにある小さな骨の骨折)」のケガを負ったとしましょう。
この場合、救急搬送された病院の医師は、生命等に関わる重大な「脳出血」をメインに考え、治療に取り組みますので、他の部位の診断が疎かになってしまう可能性があります。
また、「舟状骨骨折」については、医師が見落しがちな骨折として知られています(手のレントゲンを撮っても確認が難しく、ご本人も捻挫等と勘違いして骨折に気付かない例があります)。
このようなケースで、医師が「舟状骨骨折」の方を見落としてしまい、かなり期間が経過した後に骨折が判明した場合、加害者側から「その骨折は事故以後に別の原因で発生したのではないか」などと主張され、面倒なことになってしまう場合があるのです。
このようなことがないように、被害者としては、「自分の全ての症状を医師に伝え、カルテ等に記録を残してもらう」ということが重要になってきます。
脳出血の症状が落ち着いて意識もはっきりしてきた時点で、「右手が痛い、腫れている」と気付いたら、一刻も早く、それを医師や看護師に訴え、カルテ等に残してもらうことが必要です。
その上で、右手の状態をレントゲンやCTで撮ってもらう等、「画像という形で証拠に残してもらう」ということも重要です(舟状骨骨折が疑われるなら、CTまで撮ってもらった方が良いかも知れません)。
入院や手術を伴う治療については、100万円を超える治療費用が掛かる場合も少なくありません。
そのような治療費を誰がどのように負担するのか、被害者としては気になるところです。
この場合の基本的な考え方は次のとおりです
ひとまず治療費の心配はありません。
治療費がどれほどになっても、大企業である保険会社の資金力で支払ってくれるでしょう。
この場合、治療費の一部があなたの負担になる可能性があるので、治療費を安くする必要があります。
治療費が低額ならそれほど問題ないかも知れませんが、高額(特に120万円を超える額)になる場合や、あなたの過失割合が大きい場合は、健康保険使用を検討すべきです。
この場合、加害者に資産がなく治療費を取りはぐれる可能性が高い(保険に入っていない人はお金がないと推測される)ので、やはり、治療費を安くする必要があります。
治療費が低額ならそれほど問題はないかも知れませんが、高額(特に120万円を超える額)になる場合は健康保険使用を検討すべきです。
ケース②や、ケース③の場合には、健康保険使用を検討する必要がありますが、病院側で健康保険の使用を歓迎しない場合もあるので、そのあたり状況も含めて検討する必要があります。
健康保険使用を検討される場合、「交通事故の治療と健康保険」に詳細な内容を記載しているのでご覧ください。
また、これらの場合には、加害者側の自賠責保険からお金を回収することが重要になります。
詳しくは「自賠責保険とは」をご覧ください。
なお、ケース②、ケース③のような場合でも、
には、人身傷害保険から治療費等々の支払をしてもらえることになります。
たとえば、貴方の過失が9割という重傷事故で、多額の入院治療費がかかる場合にも、貴方の側で人身傷害保険に入っていれば、治療費の心配はありません。
いつ何時「無保険で全くお金がないドライバーにひかれて大けがをした」というような恐ろしい事態が降りかかってくるかもしれないわけですから、人身傷害保険には入っておいた方が良いと思います。
人身傷害保険については「人身傷害保険とは」をご覧ください。
また、
には、労災保険から治療費全額を出してもらうことが出来ます。
貴方の勤務している企業は労災の申請を嫌がるかもしれませんが、労災保険の適用は被害者にとって有利な点が多々ありますので、申請をしてもらうべきです。
労災保険使用で得られるメリット等については「交通事故の治療と労災保険」をご覧ください。
いずれにしても、交通事故の治療費をどのように支払ったらよいか、については、色々とややこしい要素が絡み合っており、一概に正解を示すことが困難です。
従いまして、重傷事故で治療費の支払い関係が分からない、不安がある、等の際には、交通事故に詳しい弁護士等にご相談いただきたいと思います。
交通事故としての治療をいつまで継続するかは、一つの難しい問題です。
一般論としては、「事故発生から症状固定まで」が事故の治療期間であると考えられています。
「症状固定」とは、「これ以上治療を継続しても、症状に変化がない状態」とされます。
逆に言えば、治療継続により症状が改善する等、効果がある場合には、まだ治療を続けて良い、ということになります。
よく問題になるのは、いわゆるむちうちによる頸部捻挫、腰部捻挫のケースで、保険会社側から「これ以上治療を継続しても効果は無いから、治療を中止するように」と要求されるような「打ち切り」のケースです。
このような場合でも、主治医の先生が、「さらに治療を継続する必要性、相当性がある」と仰って下さるのであれば、いったん自腹で治療を続け、後にまとめて加害者側に治療費を請求していくことが可能です。
詳しくは「保険会社による治療費打ち切り問題」をご覧ください。
被害者の皆様にとっては、事故の治療がどのようなスケジュールでなされるのか、治療費の支払いはどうなるのか、正当な賠償を受けるためにどのような検査を受け、どのような診断書を作成して頂く必要があるのか、分からない事ばかりだと思います。
また、医療の素人である皆様は、医師に自分の症状を十分に伝えることが出来ず、最悪の場合、医師との適切なコミュニケーションが取れず、非常に困惑されているかも知れません(「医師の先生が怖くて何も言えない」という方も少なくありません)。
そのような場合には、多数の事故を扱っている弁護士等の専門家にご相談を頂ければ、いくらかでも良い方向に向かうアドバイスを受けることが出来るかもしれません。
また、弁護士等の専門家が事件をお引き受けした場合、主治医の先生に面談等して、必要な画像検査や診断書、意見書作成をしていただけるよう、お願いするもあります。
このように、治療継続期間中であっても、専門家のアドバイスを受けることは十分に有益ですので、事故発生後できるだけ早期に、弁護士等へのご相談をご検討下さい(※)。
特に、「高次脳機能障害」等の重症ケースでは、事故発生後早い段階で所定の画像検査を行い、後遺障害の等級認定に焦点を当てた各種の神経心理学的検査を検討しなければならない必要性が高いですので、重症ケースについては、治療途中の早い段階から専門家にご相談をされることを、強くお勧めします。
※ 弁護士の中には、「治療が終了して、後遺障害の認定を受けてから相談に来てください」などという態度を取る方も少なくないようです。そのような弁護士は、「治療中に十分打合せをした方が良い事案が存在する」という事実を認識していない可能性があります。
その意味で、「治療中からご相談ください」という旨を標榜している弁護士にご相談された方が無難かもしれません。
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