民事再生とは、借金が返済不可能のおそれがあるくらい多額な場合に、その方の収入によって「破産した場合よりはいくらか多く返済する」という「再生計画」を立てさせ、その「再生計画」に従った返済を続ける限り、それ以上の借金の支払い義務はないものとされる(免責)という、裁判所の手続きです。
民事再生の手続きを行う場合も、自己破産の場合と同じように、裁判所に、あなたの借金の状況や財産・収入などの状況をまとめた書類を提出し、「民事再生の申し立て」をしなければなりません。
民事再生の手続きでは、「清算価値保証原則」がキーワードとなります。
これは、要するに「破産して全財産を精算した場合よりも、いくらかは多い金額を返済する。」というような意味です。
このような「清算価値補償原則」に沿って、「債権者の皆様に、毎月○万円の返済を○年間、合計○○万円をお返しします。」というような「再生計画」を立案します。
その上で、債権者の皆様が「その計画で構わない」として可決してくれて(※)、裁判所もその計画を認可した場合には、「再生計画」に記載した以外の借金の返済はしなくて良くなるのです。
通常の民事再生は、基本的には事業者(会社など)の倒産処理のために定めらた複雑な手続きで、かなりの金額を裁判所に納めなければなりません。
これでは一般の個人の方が民事再生の手続きを利用できないので、そのような個人のために、費用の安い簡易な手続きが用意されています。
これが、「小規模個人再生」の手続きと、「給与所得者再生」の手続きです。
「小規模個人再生」を利用する場合、上記の「清算価値保証原則」に加えて、「最低弁済額」というものが設定されます。
具体的には、「借金総額の5分の1と100万円のどちらか多い方」以上の金額を返済する必要があります(借金総額が1500万円以上の時は※1参照)。
このような「最低弁済額」以上の金額を、3~5年で分割返済するという「再生計画」を立てて、債権者の皆様の可決を求めます。
例えば、貴方の借金が合計450万円である場合は
450万円 ÷ 5 = 90万円 < 100万円
なので、100万円を3~5年以内で返済するという「再生計画」を提案します。
「給与所得者再生」を利用する場合は、あなたの給与収入と生活費を分析した上で計算された「可処分所得」の2年分の金額を計算します。
そして、上記「小規模個人再生」のところで説明した「最低弁済額」と「可処分所得の2年分」のうちの高い方以上の金額を3~5年で分割返済するという「再生計画」を立案します。
例えば、貴方の借金が450万円で、可処分所得の2年分が150万円である場合、
450万円 ÷ 5 = 90万円 < 100万円 <150万円
なので、150万円を3~5年以内で分割返済するという「再生計画」を立案します。
「給与所得者再生」のメリットとして、上記のルールに従った「再生計画」を立てさえすれば、債権者の皆様の「可決」がなくても手続きが遂行できるという点があります。
民事再生においては、「清算価値保証原則」がある以上「破産して全財産を精算した場合よりも、いくらか多い金額」を返済しなければなりません。
それでは、「わざわざ破産でなくて民事再生を選ぶ理由は一体何か?」ということになりますが、これについては2点考えられます。
第1点は、「免責不許可事由がない」ということです。
破産では、破産に至った経緯についてご本人に不誠実な事情がある場合(例えば、安易なギャンブルで巨額の借金を作った等)、免責されない、すなわち借金がチャラにならない可能性があります。
これに対し民事再生では、ご本人に不誠実な事情があっても、「再生計画」さえ認めてもらえれば、残りの借金は返済する必要がなくなります。
第2点は、「ローン付きの住宅を残せる場合がある」ということです。
「再生計画」の中で、「住宅ローン以外の借金は減額して下さい、住宅ローンだけはきっちり払い続けて住宅を残します」というような内容を定めることもできるのです。
これを「住宅資金特別条項」といいます。
このように、「借金を作った経緯に不誠実な事情がある場合」や、「ローン付きの住宅を残したい場合」等には、民事再生を検討する必要があるでしょう。
民事再生の手続きは、なかなか複雑な内容になっているので、手続きを希望される場合には弁護士にご相談いただいた方が良いでしょう。
※1 より正確に説明すると、
借金総額が500万円以下の場合は100万円
借金総額が500~1500万円の場合は借金総額の5分の1
借金総額が1500~3000万円の場合は300万円
借金総額が3000万円以上の場合は借金の10分の1
を返済する必要があります(民事再生法231条2項3、4号)。
なお、「住宅資金特別条項」を使う場合の住宅ローンの金額は、上記の「借金総額」には入れません。
※2 例外的に「給与所得者再生」の場合は、債権者の皆様の決議は必要有りません。本文2項をご覧下さい。
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