せき柱とは、いわゆる背骨のことです。
また、体幹とは身体の頭部と四肢を除く胴体部分とされますが、このような体幹にある背骨のほか、鎖骨、胸骨、肋骨、肩甲骨、骨盤骨などを、「体幹骨」ということがあります。
「労災補償後遺障害認定必携」では、上記のうち、背骨を「せき柱」として、その他の骨を「その他の体幹骨」として整理しています。
交通事故により、上記のような体幹骨が、骨折等の外傷を負うことがあります。
特に多く見られるのは、歩行者や自転車運転者が事故により尻餅をついた場合に腰部の背骨の一部が圧迫骨折する「腰椎圧迫骨折」です。
圧迫骨折がより重症の場合には「粉砕骨折」、「破裂骨折」と呼ばれることもあります。
状況によっては、腰椎より上の方にある「胸椎」が圧迫骨折等することもあります。
このような腰椎圧迫骨折がひどい場合には、脊髄損傷といった神経系統の障害を生じてしまうこともあります(但し、本項では主に骨折に関連する障害を扱います)。
また、歩行者や自転車が自動車に衝突された事故では、肋骨、肩甲骨、鎖骨、骨盤骨といった体幹骨が骨折することが少なくありません。
これら体幹骨の外傷により、症状固定後も障害が残ってしまう場合がありますが、労災保険及び自賠責保険では、このような障害について「機能障害」、「変形障害」という分類をしています(なお、以下の説明では、便宜上、自賠責保険の等級表を掲載します)。
骨折の治療が終了した時点で、骨に変形が残ってしまった場合の後遺障害等級は下記のとおりです。
等級 | 障害の程度 |
---|---|
第6級5号 | せき柱に著しい変形を残すもの |
第8級相当 | せき柱に中程度の変形を残すもの |
第11級7号 | せき柱に変形を残すもの |
「せき柱に変形を残すもの」とは、「せき椎圧迫骨折等を残しており、そのことがX線写真等により確認できるもの」等です。
「X線写真等によりせき椎圧迫骨折を確認することができる場合」の中でも、いわゆる「後彎」が生じているもの等、程度が重い場合には、「せき柱に中程度の変形を残すもの」として、8級相当とされることがあります。
「せき柱に著しい変形を残すもの」とは、「X線写真等によりせき椎圧迫骨折を確認することができる場合」の中でも、「2個以上の椎体の前方椎体高が著しく減少し、後彎が生じているもの」等、著しく程度が重い場合とされており、このような場合にはより重い第6級 号が認定されます。
なお、上記の説明は詳細を省略しており、変形障害の全てを説明し尽くしているものではありませんので、ご了承ください(※)。
事故によるせき柱の骨折の治療が終了したが、動かしにくいという運動障害が残ってしまった場合、その程度に応じて下記のような後遺障害が認定されます。
等級 | 障害の程度 |
---|---|
第6級5号 | せき柱に著しい運動障害を残すもの |
第8級2号 | せき柱に運動障害を残すもの |
「脊柱に運動障害を残すもの」とは、上記3で記載したような「せき柱に変形を残すもの」にあたることを前提として、これにより「頸部または腰部の可動域が参考可動域角度の1/2以下に制限されたもの」とされます。
頚部の参考可動域は「伸展」(後ろに曲げる)が50度、「屈曲」(前に曲げる)が60度、合計110度とされていますので、症状固定時の頸部の「伸展」、「屈曲」の合計が55度以下となるような場合には、「運動障害」が認められることになります。
腰部の参考可動域は、「伸展」30度、「屈曲」45度ですので、症状固定時の「伸展」「屈曲」の合計が、35度以下となるような場合には「運動障害」が認められることになります。
「脊柱に著しい運動障害を残すもの」とは、上記3で記載したような「せき柱に変形を残すもの」にあたることを前提として、これにより「頸部及び胸腰部が強直したもの」とされます。
「強直」とは全く動かないか、それに近い状態ということです。
等級 | 障害の程度 |
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第12級5号 | 鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨または骨盤骨に著しい変形を残すもの |
「鎖骨、胸骨、ろく骨、肩こう骨又は骨盤骨に著しい変形障害を残すもの」とは、「裸体となったとき、変形(欠損)が明らかに分かる程度のもの」をいう、とされています。
もっとも、自賠責の等級認定では書類審査であり面談はされないのが原則であるため、実際にはX線写真等を見てどの程度のひどさであるかを判断しているものと思われます。
なお、「その他の体幹骨」の骨折による運動障害については、特に定めがありません。
例えば鎖骨を骨折した場合、肩関節の可動域に影響が出るようなことはありますが、その場合には、体幹ではなく「上肢の後遺障害」として認定されることになります。
※ 変形障害の詳細は非常に多岐にわたるため、その全てを記載すると却って分かりにくくなると判断しました。
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