後遺障害逸失利益の計算では、たとえば30歳会社員の被害者が「右手のこ指を失った」として第12級を認定されたのであれば、原則として67歳までの37年間の労働に支障が生じたとして計算を行います。
仮に、この被害者の基礎収入を年400万円として考えるとすると、12級の労働能力喪失率は原則14%なので
400万円 × 0.14 × 37 = 2072万円
が損害となりそうです。
しかしながら、上記は、被害者が今後37年に渡って獲得するはずだった収入の1部を受け取るものです。
このように、後遺障害逸失利益が「将来の収入を先行して受領する」という性質を有することから、その期間に対応する利息については差し引いて受領するべきであると考えられており、このことを「中間利息控除」といいます。
では、そのような「中間利息控除」をする場合にはどのような計算方法を用いればよいか、というのはなかなか複雑な問題になります。
例えば、上記のケースで、「1年後に貰える収入に対応する賠償金は1年分の利息を控除して、2年後に貰える収入に対応する賠償金は2年分の利息を控除して…」というような計算をすると非常にややこしいことになるのがお分かりでしょうか。
この計算の詳細については、ここでは説明を差し控えますが、現在、裁判所では中間利息控除について「年利5%を前提としたライプニッツ方式」によるのが主流の考えとなっております。
具体的には、労働能力喪失年数に対応して、以下の表に記載されたような数字を用います。
労働能力喪失期間 | ライプニッツ係数 | 労働能力喪失期間 | ライプニッツ係数 |
---|---|---|---|
1年 | 0.9524 | 25年 | 14.0939 |
2年 | 1.8594 | 26年 | 14.3752 |
3年 | 2.7232 | 27年 | 14.6430 |
4年 | 3.5460 | 28年 | 14.8981 |
5年 | 4.3295 | 29年 | 15.1411 |
6年 | 5.0757 | 30年 | 15.3725 |
7年 | 5.7864 | 31年 | 15.5928 |
8年 | 6.4632 | 32年 | 15.8027 |
9年 | 7.1078 | 33年 | 16.0025 |
10年 | 7.7217 | 34年 | 16.1929 |
11年 | 8.3064 | 35年 | 16.3742 |
12年 | 8.8633 | 36年 | 16.5469 |
13年 | 9.3936 | 37年 | 16.7113 |
14年 | 9.8986 | 38年 | 16.8679 |
15年 | 10.3797 | 39年 | 17.0170 |
16年 | 10.8378 | 40年 | 17.1591 |
17年 | 11.2741 | 41年 | 17.2944 |
18年 | 11.6896 | 42年 | 17.4232 |
19年 | 12.0853 | 43年 | 17.5459 |
20年 | 12.4622 | 44年 | 17.6628 |
21年 | 12.8212 | 45年 | 17.7741 |
22年 | 13.1630 | 46年 | 17.8801 |
23年 | 13.4886 | 47年 | 17.9810 |
24年 | 13.7986 |
上記1の30歳会社員の事例で言えば
400万円 × 0.14 × 37年のライプニッツ係数16.7113
= 935万8328円
となります。
上記2の計算を見て、「ライプニッツ方式の計算をすると、ずいぶん少ない額になってしまうのだなあ」と思われる方も多いでしょう。
実は、この計算については、「被害者が受領した賠償金を定期預金に入れれば年5%の利息を稼げる」ということを前提としているために、被害者にとって非常に不利になっているのです。
昨今の金融情勢においては、被害者が1年ものの定期預金に資金を投じても、年1パーセントの利息も得ることはできません。
それにも関わらず、「被害者は高い利息を得られるはずだ」という前提で大幅に削減された逸失利益しかもらえないとすれば、いかにも不公平です。
従って、「年利5%」という計算は不当であり誤っているのですが、残念ながら、最高裁の判例がこの不当な計算を採用してしまったため、争うことが非常に難しくなっているのが現状です。
この不当な計算方法については、今後の施行が予定されている民法改正において「年利3%を前提としたライプニッツ係数」に変更されることになっており、そうなれば、被害者の受領できる逸失利益も増額する可能性があります。
そうなれば、被害者の受領できる後遺障害逸失利益も大幅に増額することが予想されます。
新法の適用範囲がどこまでとなるかという点を含めて、今後の推移を注視していく必要があるでしょう。
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